うんこマンの思い出

思い出した時に書いているので、時系列は滅茶苦茶です。

「我々」さん

私が入院する約1年前、Mの具合がおかしくなった(Mについてここで詳しく書くのは止めておく)。あることをきっかけにMの人格(私が知っているMも知らないM――多分子供時代の――もいた)がバラバラに出て来て次々訳の分からないことを喋り始め、更にM自身とは違う「我々」と名乗る人々もMの口で話し出した。「我々」さんにも役割がある様で、忙しく子育てをしているらしい女の人や言葉遣いに厳しい(恐らく言葉や意味の繋がりを管理している)お兄さん、大らかなおじさん、人格一人一人に付いてサポートしている子、「誰ですかー?」と尋ねまわっている子、シュークリームを配っている子などがいた。
そのMの中の「我々」さんと話している内、私の頭の中で「私達、喋って良かったんだ」と私の中の「我々」さんが囁き始めた。その「我々」さんとMの「我々」さんは声や喋り方、役割が似ていた。「我々」さんは私に励ましやアドバイスをくれる様になったが、彼らは頭の中で働いているのでいまいち現実味が無く、なんだかふわふわしていた。
私はMに何が起こっているのか理解したくて、図書館で脳科学の一般書を借りて何冊も読んだ。そして「我々」さんはグリア細胞と呼ばれているものであり、「我々」さんが育てたり管理したりしているのは神経細胞ではないか、という妄想的信念を抱き始めた。「我々」さんに尋ねると「人間が全てを理解するのは不可能です」とのことだった。
1年後、このグリア細胞についての妄想と魂からの幻聴とが結び付き、私は「グリア細胞が魂の乗り物であり、魂達は居場所を求め世界中を彷徨い人々の脳内を出入りしている」と信じ込んだ。