うんこマンの思い出

思い出した時に書いているので、時系列は滅茶苦茶です。

陰性症状の苦痛と再発への恐怖について

急性期症状が治まり退院し一見落ち着いた様に見える病者に対し、周囲の人間は社会復帰を促す。私自身、支援者に社会復帰出来る手順を教えてもらいたいと思っていたので、勧められるがまま数ヶ所作業所の見学へ行った。しかし怖くて通所まで至らず、現在も社会的には引きこもり状態である。そこで、一体何が怖いのか説明したい。

「何がしたい?」と訊かれるのが怖い

支援者からよく「何がしたい?」「どうしたい?」と訊ねられ、作業所の職員からも「何か目的を持って来てもらわないと困る」と言われたが、頭がフリーズするばかりだった。
思うに、統合失調症とは何がしたいか分からなくなる病気なのだ。

入院前の趣味が遠ざかり、心が動かない

部屋の棚には入院前に集めていた本やCD、映像ソフトが並んでいるが、手を伸ばしてみても、手に取れない。とても遠く感じる。以前の様に面白そう、楽しそうと思えない。わくわくしない。無理矢理手に取って本を読もうとすると、脳が苦しくなる。音楽を流してみても心が動かず、何も感じない。映画も頭に入って来ず、5分も見ていられない。
食欲は残っており、余程具合が悪くなければ食事は出来る。億劫に感じつつも風呂に入り(入れなくても顔と頭だけは洗い)、洗濯もする。時々食料・日用品をに買いに出かける。週に一回、看護師さんが来る前にお掃除。薬を飲んで眠り、朝になったら起きる。まるで問題なく病人として最低限の生活が出来ているみたいだ。しかし、それだけでへとへとになってしまい一日の殆どが「無」で、横になって時計を何度も眺め、時が過ぎるのを待つばかり。*1
このつらさが健康な人には理解し難い様で、どんなに説明しても伝わらないと感じている。食っちゃ寝してのんびり過ごせて良いじゃないかと思われる様だ。とてもさびしい。そういう時は寝転んでも全く気持ち良くないのに。
私は今のところ、ずーっと陰性症状に苦しめられているわけではない。本を読めていた時期もあるし、音楽を聞いて心地良くなる時間も時々あるし、映画を一本楽しめる日もある。ただ、それは非常にラッキーな時であり、更に元気な日が続いてしまうと、それはそれで要注意なのである。

やる気と陽性症状は紙一重

なんだか最近楽しい。充実感があり、生き生きしている。もう病気治ったんじゃないの?
そんな時やってくるのが陽性症状だ。どうしてかは分からない。そういう仕組みの脳味噌になってしまったのだろう。そういう病気なのだろう。
急性期ほどの激しさは無いものの、頭の中で恐ろしいことを言われるのに耐えきれず、抗精神病薬の量を増やしてもらう。そして陽性症状は治まるが、また無の時間が増えてつらくなる。こんなの耐えられないと、薬の量を戻してもらう。今はまだそうやって、病気との付き合い方を学んでいる最中。
こんな状態で「何がしたい?」と訊かれても、頭の中?????であり、私の希望は「再発しないこと」「入院しないこと」くらいしか無い。

再発が怖い

統合失調症の再発と言う場合、急性期症状の再発を指している様だ。私が恐れているのもそれだ。ストレスが大敵だと書いてあるのをよく目にする。

思っていた以上に無能になっており、ストレスに弱い

家族や支援者は簡単に「とりあえず作業所から始めて、いずれは障害者雇用で」などと言う。私も退院時はそう考えていた。
でも、入院前に行っていた内職ですら集中力不足で出来なかった。一体私に何の作業が出来ると言うのだろう。作業所の雰囲気もピリピリしていて脳に負担がかかり、再発の不安を抑えることが出来なかった。

再発の不安

自分で自分をコントロール出来なくなる恐怖、急性期の妄想・幻覚による地獄、入院中のあれこれ(拘束時の耐え難い腰痛、くそ不味いゼリー飲料、多剤大量処方による副作用、医師・看護師の心無い一言、集団生活のストレス等々)、果てしなく感じる無の時間、首吊りの練習――全部私の身に起こることで、誰も身代わりになって苦しんでくれるわけじゃない。私は自分を守りたい。他人の言うことを聞いて無理は出来ない。

私の様な病状の人はどうしているんだろう?

私みたいな人は不安の中ひっそり引きこもっているのかな。どこかにそういう人がいるのかな。
社会復帰出来ている人、そうでなくても楽しく暮らせている人はこの陰性症状や無力さ、不安、恐怖をどう克服したのだろう。
支援者は様々なケースを見ているはずなので、その辺りのことを聞きたかった。病状に合わせたサービスを段階的に紹介してほしかった。しかし、うまくコミュニケーションが取れなかった。私は話すのが下手くそだし、他人に助けを求めるのは無駄かも知れない。
私は私を助けられるだろうか。今後の人生どうなってしまうのか、不安だらけである。

*1:「殆ど」と書いたのは例外があるからだ。それは退院後2年ほど経ってから突如始めた野球観戦(もちろん現地ではなく映像)。当然具合が悪ければ楽しめないが、そういう時は飯も食えない。つまり食欲と野球欲は同等。野球は偉大! ありがとう野球!